中村流抜刀道

中村流抜刀道は、旧陸軍戸山学校「軍刀の操法及試斬」としてまとめられた戸山流抜刀術が源流です。

のちに中村流を創始した中村泰三郎師範は戸山学校において剣術教官を拝命。 

終戦後も刀法の研究を続け、八方斬(八法の構え・八方斬・八種の納刀)を草案、
これを拡大した型・組太刀(刀対刀・刀対槍)により構成されるものが中村流抜刀道です。

立ち技を本義とし、自然刀法「円形線」の体得を重視します

また、型とともに試斬を両輪の車として修練するのが特徴です。

 


八方斬りの骨子


一本目:片手初発刀、左袈裟斬

二本目:右斜め上方斬、右袈裟斬

三本目:左袈裟斬、右横一文字斬、左袈裟斬

四本目:右袈裟斬、左横一文字斬、右袈裟斬

五本目:左斜め上方斬、右横一文字斬、左袈裟斬

六本目:右斜め上方斬、左横一文字斬、右袈裟斬

七本目:左袈裟斬、右袈裟斬、左袈裟斬

八本目:片手右袈裟斬、左袈裟斬、諸手突き

 


試斬

組太刀

一本目:抜き打ち、左袈裟斬

二本目:中段刺突

三本目:中段、左袈裟斬

四本目:右上段、抜胴

五本目:右八双、右袈裟斬

六本目:左上段、左袈裟斬

 


中村流抜刀道の理念

抜刀道は居合・剣道との連携により真剣斬を習得し、剣の理合にそった

「居・剣・斬」の三道一体を目標に、真剣による間合いと刀線の刃筋・角度・円形線を修得する。

(中村流抜刀道 八方斬刀法「刀法理念と修練留意点」より抜粋)

 

中村流抜刀道 八方斬刀法「刀法中村流抜刀道の精神

「居合とは、人に斬られず人斬らず、自己の錬磨に修養の道」

 

剣の道の目的は、人を斬ることにあらず、自身の修養にある。

日本刀とは世界に類を見ない美術工芸品であり、我々日本人にとって民族の誇りでもある。

その日本刀をもって精神と肉体の修養につとめる事に、抜刀道の意義がある。

(「日本刀精神と抜刀道]」より抜粋)

 

刀法理念

「自然体」と「合理性」。「剣は心なり」と言われるように、心を中心として真っ直ぐな杉の大木のように立つ正眼の構えから、自主自在に千変万化の技を出すのが自然体の土台です。正しい「刃筋」「角度」「円形線」「手の内」、また刀身の「止め方」「流し方」、そして刀勢を利用した次の敵に対する刀法合理性を研鑽されたのが中村流抜刀道です。

 


現宗家 ごあいさつ

 我々の永遠の師、中村泰三郎先生は、お世話になった方々に沢山の感謝の言葉を遺して
九十二歳で永眠いたしました。

その声を思い出すとき、会員各位の修練成果を心から喜び「みんな 有難う 有難う」と
目を細め、手を上げてお礼を申していることだろうと思います。

そしてこれからの抜刀道の発展を見守り続けてくれていることだろうと思います。

 先生の著書の中に次のような一節があります。

 

~ 「心や技にいささかの乱れがあっても、真剣斬りの結果にそのまま差が出てしまう。
斬るときは精神統一をして心の動揺をなくし必ず斬るぞ!という決断が大事である。
また斬る前に柄の目釘が安全であるか確認することが一番必要なことである」 ~

 

先生が常々お伝えしていた言葉を思い起していただき、
皆様がはじめて刀を手にとられた時の「初心」を忘れずに、精進を継続していただけるよう念願します。

 日本刀の制作目的は何ものをも截断することにあります。

しかしこの刀は藁や茣蓙を斬る為に造られたのではありません。
仮標を斬るのは切れ味、角度などを自得するためです。

「神剣不殺」「神剣百邪拂」は好く先生の書かれた字です。
また座右の銘は「五常」と「一源三流」だと常に云われておりました。

 私たちは師の理想に一歩なりとも近づきたいと、念願し努力したいと思います。

最後に本連盟の発展にご尽力いただいている剣兄諸姉に厚く御礼を申し上げます。

 

平成18年1月吉日

中村流抜刀道 二代宗家
國際抜刀道連盟 会長

 

中村朋子